譲渡型保護猫カフェ:保護猫ハウス ろくねこ 店舗概要



アクセルデザイン編集部今回は、保護猫ハウス「ろくねこ」の石山さんに特別に取材させていただいたんですよね!楽しみです。



保護猫ハウスへの取材自体が初めてでしたし、興味深い話が多くてあっという間に時間が過ぎました。
保護猫ハウスろくねこ石山さん(以下、石山さん:)
インタビューアー(以下、———アクセルデザイン)
異色の経歴と活動の原点:なぜ保護猫ハウスだったのか
——— 酒屋さんを17年間も続けた後、まったく異なる分野である動物病院の設立、そして保護猫活動へと踏み出された経緯について教えていただけますか?



はい。17年間、酒屋を営んできました。その間、夫は牛専門の獣医師としてキャリアを積んできまして、3年前に独立して動物病院を立ち上げたんです。
その事業が株式会社化するなどして落ち着いてきたタイミングで、「そろそろ私の部署があってもいいんじゃない?」と。
それがこの保護猫活動の始まりです。
結婚してからの私しか知らない方からは「本当にやるの?」と驚かれましたね。酒屋時代の私からは、まったく想像がつかなかったようです。




———自分のやりたいことを具体化するタイミングだったんですね。そう思い立った、何かきっかけのようなものはあったのですか?



私はもともと動物系の大学を卒業していまして、そこから結婚をして主人の実家の酒屋の仕事をずっとやってきた中で、これからの自分の人生を深く考え、「やり残していることは何か」と自問したんです。
そうしたら、動物のこと、特に犬や猫のことについて、強い心残りがあることに気づきました。
自分がやるべきことをやろう、そう思ったからです。
———保護猫ハウスというと、強い覚悟的なものが必要だと思うのですが、どのような理念がおありなのでしょうか?



究極の目標は、「私が生きている間に、この保護活動が必要なくなるようにしたい」ということです。「殺処分ゼロ」という言葉も大切ですが、それは結果に過ぎません。
私たちは、保護しなければならない動物が次々と発生してしまう仕組みそのものを抑えていきたい。
根本的な原因にアプローチしなければ、結局この問題は終わらないんですよね。
みんなで作るコミュニティ:「ろくねこ」の独自のアプローチ


———施設の名前には「みんなで作るコミュニティ」とあります。この言葉が、先ほどのアプローチのためのキーワードとなっている気がします。ぜひ具体的なところを教えてください。



先ほどの「動物が発生する仕組みを抑える」という根本原因へのアプローチのために、「ろくねこ」をコミュニティの拠点と位置付けています。
例えば、地域の子どもたちが動物と触れ合う機会を提供することもその一つです。
———子どもたちがろくねこさんのところに遊びに来るのですか?



はい、小学生たちが遊びに来ます!
ここは法律上「動物展示業」の扱いになるんです。
私たちは、子どものうちから猫と遊び、遊びながら命に触れて何かを感じ取ってもらいたい、そんなことを思っています。
———なるほど!それは大切な教育ですね。将来的な捨て猫問題や多頭飼育崩壊などの問題解決にも繋がりますね。



はい、そう願っています。
もちろん、将来的な問題へ抑止だけではなく、直近の問題解決として、飼い主さん向けのセミナーなどの啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。


———ボランティアの方もたくさんいらっしゃるとか。



はい、現在この「ろくねこ」には28人のボランティアさんが在籍してくれています。猫のお世話はもちろん、SNSに載せる動画の作成や、イベントでの物販など、関わり方は本当に多様です。
———結構たくさんの方がいらっしゃるのですね!勝手な想像なのですが、ボランティアとして参加するのには何か厳しい条件がありそうなイメージなのですが。



いえいえ!そんな特別な何かはいらないですよ(笑)
私たちが大切にしているのは「関わりを作ること」なんです。
専門知識がなくても、「飼えないけど何かしたい」という「やさしい気持ち」があれば参加できるオープンな雰囲気を心がけています。
———なるほど!こうあるべき、と杓子定規的に考えて保護猫問題を解決するのではなく、みんなで解決する意識ですね!



私たち「ろくねこ」だけの力で解決できませんし、私たちが一方的にルールを作るのでもないと思っています。
猫が好き、何か力になりたい、そんな温かい方たちと一緒に考えていきたいんです。
ありがたいことに、実際にお客さんとして来てくれた方が「手伝うよ」とボランティアになってくれるケースも多いんです。




———室内が、いわゆる「施設」というより「普通のお家」のような雰囲気なのが印象的です。施設内の環境作りで、特に強く意識した点はありますか?



猫たちが人や新しい環境にスムーズに慣れるため以下の3つの工夫を特に強く考えました。
1つ目が、家のような環境です。
外での生活しか知らない猫は、いきなり室内に連れてこられると大パニックを起こします。そのため、事務所のような無機質な空間ではなく、あえて「お家みたい」な内装にしました。
2つ目が、段階的な社会化です。
一頭一頭の性格を丁寧に見極め、それぞれに合った方法で社会化を進めています。「人」「他の猫」への慣れ具合を見ながら、常に刺激を与え続ける方法や、徐々に慣らしていく方法を使い分けています。
3つ目が、ストレス軽減と学習です。
ここでは常に人の気配があります。猫たちはその環境で過ごすうちに、「人がいることが普通で、でも安心」ということを学習してもらいます。
———なるほど、予行練習のような環境なんですね。



はい。「人間がいるけれど、別に何もされないんだな」と猫たちが学習することで、人馴れがぐんと進みます。
ここで免疫をつけた子たちは、新しいお家でも物怖じしないと里親さんからも好評なんですよ。



「家のような」環境と、誰もが参加しやすいオープンな運営方針は、別々の取り組みではなく、保護猫が人の環境に馴染む家庭猫へと変わり、最も重要な「譲渡」へと繋ぐための導線であると感じました。
保護から譲渡へ:一頭一頭に寄り添う現実的なサポート


———ここにいる猫たちは、主にどこからやってくるのでしょうか?



そうですね、猫たちがここに来るルートは、主に3つあります。
1つ目は、動物愛護センターから来るパターンです。
私たちは千葉県の譲渡ボランティア団体として登録しており、センターに収容された猫を引き取っています。ここにいる子たちの多くは元々飼われていた猫で、飼い主が飼えなくなったケースがほとんどです。
2つ目は、SOSの連絡が入る、また相談がきっかけとなるケースです。
例えば、ご高齢で飼育が困難になった方からの依頼や、野良猫が50匹にまで増えてしまい、「助けてほしい」という切実な相談が舞い込んできたこともあります。
3つ目が、他団体からの協力依頼です。
他の保護団体から協力依頼を受けることもあります。最近では、埼玉で非常に危険な状態に置かれていた子猫たちを緊急で受け入れ、ここで治療と健康管理を行いました。




———なるほど、いろいろな形でやってくるのですね。そうなると猫が増え、今度は里親探しもやらなければなりませんね。
里親になるための「条件」が厳しい、というイメージを持つ方も多いと思いますが、実際そのハードルは高いものなのでしょうか。



私たち「ろくねこ」の譲渡条件は、動物愛護センターの基準に準じています。最低限の条件として、ペット可の物件にお住まいであることの確認はさせていただきます。
また、動物を多数集めてしまうアニマルホルダーでないかを見極めるため、必ずご自宅まで猫をお届けし、環境を確認させていただいています。
———勝手にすごくハードルが高いものだと思っていました。里親になってくれる方が、実際にはどのような人なのかの見極めも大事だと思いますが、希望者の方と面談やコミュニケーションはどのように取っているのでしょうか?



希望者の方とは、1時間ほどかけてじっくりお話をさせていただいています。その対話の中で、その方の人となりを理解することを大切にしています。
もちろんご高齢の方でも、お子さんなどご家族のサポート体制がしっかりしていれば、譲渡を検討させていただきますし、年齢で一律に制限するようなことはしていません。
あとは、猫を飼うには費用がかかる、といった現実的な経済的負担についてもお伝えし、後々のミスマッチが起こらないように努めています。
地域との共存を目指して:多様な価値観との向き合い方


———新松戸という地域で活動する中で、野良猫問題に対する住民の方々の反応はいかがですか? 複雑な思いを抱えている方もいらっしゃるのでは。



おっしゃる通り、現場は非常に複雑です。
同じ新松戸の中でも、あるマンションでは50匹もの野良猫がいて住民トラブルになっている一方で、別のエリアでは地域猫活動が浸透して、ほとんど問題が起きていない場所もあります。
———考え方も人それぞれですよね。「かわいそうだからエサをあげたい」という人もいれば、「何とかしてほしい」という人もいます。



はい、そうなんです。さらに「外にいるのが猫にとっての幸せだ」「不妊手術をするなんて残酷だ」という意見を持つ方もいらっしゃいます。
ですので私たちは、自分たちの正義を一方的に押し付けることはしないんです。




———なるほど!多様な意見があるので、難しいのは「どう接点を見つけるか」ですね。



私たち「ろくねこ」が心がけているのは、「事実」を伝えることです。
「このままだと、この子たちは病気で若くして亡くなってしまいます」「不妊手術をしないと、半年後にはこれだけ数が増えてしまいます」と、感情論ではなく現実をお伝えします。
その上で、どうすれば人間も猫も心地よく暮らせるか、一緒に解決策を模索していく。泥臭い作業ですが、それが地域に根ざすということだと思っています。
「ろくねこ」のSNS発信。あえて辛い話はしない理由


———石山さんのInstgram発信を見ていると、とてもポジティブで明るい印象を受けます。保護活動というと、つい「こんなにひどい状況なんです」と訴えたくなる衝動もあるのでは?



もちろん、現実は目を覆いたくなるほど過酷なこともあります。でも、私はSNSで悲惨な写真や、怒りに満ちた言葉を発信しないと決めています。
———そこにはどのような意図があるのでしょうか?



理由はシンプルで、見ている人が辛くなってしまうからです。
そうした話は、すべて私の中に留めています。
保護活動に興味を持ってくれた人が、悲しい気持ちで画面を閉じてしまうのは本望ではありませんし、何より私自身が精神的に参ってしまわないためでもあります。




———なるほど。こちら側がもし悲しい発信をすると、その印象がすべてであるような錯覚が起こりかねないですね。



大学時代に学んだ「人と動物の関係学」の視点からも、問題に関わる人々の「思い」を尊重し、その上で何ができるかを考える姿勢を大切にしています。
ネガティブなことより、「今日、この子が初めておやつを食べてくれた!」「里親さんの家でこんなに幸せそうにしています!」という喜びを共有したいと思っています。
———まさに「喜びのシェア」ですね。



そうですね。楽しさや温かさの中にこそ、持続可能な活動のヒントがあると思っています。
「ろくねこ」を「猫が幸せになるための中継地点」として、いつも明るい光を当てておきたいと思っています。
未来への展望。猫の「保護」がいらない街へ


———最後に、石山さんが描くこれからの展望について教えてください。



やはり思うのは、私たち「ろくねこ」だけでは難しいことが多いと思っています。
ですので、コミュニティづくり、そして寄付やボランティアだけでなく、より多くの方が日常の中でこの活動を支えられる「サポーター制度」の仕組みを作りたいと考えています。
長期的には、冒頭でもお話しした通り、この施設が必要なくなる未来を作ること。そのためには、子どもたち「知ってもらう」ことが欠かせません。
命を預かるとはどういうことか、自分たちに何ができるのか。次世代を担う子どもたちが当たり前のように「動物福祉」の考え方を持てるようになれば、きっともっと地域も人も明るくなると思うんです。
———猫を救うという活動が、結果的に「人の意識」を変え、街を優しくしていくのですね。



はい。一頭の猫が「卒業」していくたびに、やはり大きな喜びを感じます。でもそれはゴールではなく、新しい家族、そして地域との新しい物語の始まりだと思っています。
取材後記





猫ちゃんにとっての幸せってどうなのか、これを人間や地域の人が決定づけることをして良いのか、でも現実的に困る地域住民もいるので、難しいですね。



石山さんのお話を通じて感じたのは、「現実的」でありつつも、それを包み込む「深い愛情」でした。酒屋さんだった石山さんは今、猫という小さな命のバトンを繋ぎ、人との関わりを増やしコミュニティを作ることで、「新しい地域の形」を醸造しているのかもしれませんね。



新松戸の「ろくねこ」。そこは、猫と人が共に生きるための、温かなコミュニティセンターのような場所ですね。



保護猫だからといって、こちら側が何か特別な意識を持たないといけなかったりと、勝手にハードルが高いものだと思っていましたが、「猫ちゃん好きならウェルカム!」とおっしゃっていたのも印象的でした。
「ろくねこの扉は、いつでも開いています。猫に会いたい人も、何か自分にできることを探している人も、ぜひ一度遊びに来てください。そこから始まる何かが、きっとあるはずですから。」と石山さん。
その優しい人柄が浮かび上がってくる、とても砕けた明るい表情で、保護猫への想いを柔らかくお話されていました。
活動を広げて行くこと、コミュニティを強いものにしていくこと、そして人と猫が共に生きる未来を創り、保護猫ゼロという社会を作る挑戦は、始まったばかりです。
(取材・文:アクセルデザイン株式会社編集部)
