カフェ×ダイニング:With a Will(ウィズアウィル)店舗情報


アクセルデザイン編集部今回は、「With a Will」の竹内さんに特別に取材させていただいたんですよね!フレンチトーストが有名だとか。



オーナーの竹内さん、とにかく明るい表情で楽しそうに話す方でした。フレンチトーストのお話もバッチリ聞きましたよ!
「With a Will」竹内さん(以下、竹内さん:)
インタビューアー(以下、———アクセルデザイン)
崖っぷちの決断と、退路を断った「船出」


——— 「With a Will」5周年、本当におめでとうございます。今でこそ常連さんで賑わっていますが、振り返れば、開店直後にコロナの直撃を受けるという壮絶なスタートでしたね。



ありがとうございます。本当に、最初は閑散としたものでした。実は独立のきっかけ自体が、コロナによる「強制終了」のようなものだったんです。
以前は汐留のオフィス街にあるチェーン店で店長をしていましたが、コロナで街から人が消え、会社が撤退を決めました。
上司は羽田空港の店舗への異動を提案してくれましたが、早朝・深夜の勤務で通うのが難しく・・・。
——— なるほど。そこは誰もが厳しい思いをした時期でした。



はい、もちろん私だけではなく誰にとってもキツイ時期でした。
もしコロナ禍がなかったら、おそらく店長のままでしたし、ポジティブに捉えられるタイミングでもあったのだと思います。
だから、きっと「このタイミング」なんだと思い、4、5年前から抱いていた「自分の店を持つ」という夢と天秤にかけ、「今こそ、やるしかない」と退路を断ったんです。
——— とはいえ、安定を捨てて、あえて嵐の中に飛び込みました。相当な覚悟が必要だったのではないでしょうか。



そうですね、そこは覚悟の上だったのですが、実際にこの「With a Will」をオープンしてみると、いろいろ厳しい現実が待っていて・・・。だってお客さんが来ないんですから(笑)。
実際、経営が苦しい時期は「家のローンを妻に払ってもらっている」という情けない状態でした。
でも、その崖っぷちの状況があったからこそ、何が何でもこの店を軌跡に乗せるんだという、強い意志が生まれました。
コロナ禍で物件が空き始めていた運命的なタイミングもあり、コストを抑えてこの場所でスタートできたことは、今思えば大きな転機でした。
店名に秘められたストーリー:ファンとしての情熱が「絆」に変わる時




——— 店名の由来について伺いたいのですが、単なる「意志」以上の、熱い思いがあるそうですね。



はい。実は私、声優の椎名へきるさんの長年の大ファンなんです。
店名の「With a Will」は彼女のアルバムタイトルから取りましたし、お店のオープンの日は彼女の誕生日(3月12日)、電話番号の下4桁も「4170(しいな)」にするほど徹底しました(笑)。
——— おお、なんと(笑)!そこまで徹底されていると、ファンの方や、感度の高いお客さんは気づくのではありませんか?



はい、そうなんです!
ホームページを作ってくれたデザイナーさんが私の店名を見て、「もしかして椎名へきるさんのWith a Willですか?」と意図に気づいてくれたんです。
そして「お客様と一緒に色褪せない瞬間を共に過ごしたい」という素晴らしいキャッチコピーを提案してくれたんです。これも彼女の曲名にちなんでいるんですよ。
それを知った時は「このデザイナーさんは本物だ!」と感動しました。
——— 良い話ですね!個人的な「熱」が、プロの手を経て、洗練されたWith a Willのブランド哲学へとブラッシュアップされたのですね。



お客さまの中にも、この「仕掛け」に気づいて声をかけてくださる方が稀にいらっしゃいます。自分の思いを散りばめることで、「わかる人にはわかる」という発見の喜びや、深い信頼関係が生まれる。
それが、この店「With a Will」独自のロイヤリティに繋がっていると感じています。
至高のフレンチトースト:調理実習の記憶と、12時間の執念




——— 「With a Will」を語る上で欠かせないのが、看板メニューのフレンチトーストですが、なぜこの料理だったのでしょうか。



実は、フレンチトーストは私が人生で初めて作った料理なんです。小学校の調理実習で教わったものを家で作ったという、鮮烈な記憶がありました。
独立にあたり「この卵を一番生かせる料理は何か」と、たまたま野田の養鶏場で出会った極上の卵を手にした時、真っ先に思い浮かんだのが、かつてのそのシーンでした。
——— まさに運命の再会ですね。ただ、そのレシピを完成させるまでは相当な苦労があったとか。



ベースはホテルオークラのレシピですが、街のカフェの価格帯に抑えつつクオリティを維持するため、1年近く研究しました。
パンの芯まで卵液を染み込ませるため、今では12時間かけてじっくりと漬け込んでいます。
——— 12時間ただ漬けておくだけではなく、さまざまな管理をされているんだと思うのですが、そう考えると12時間も気を張っていないといけないのはかなり厳しいですね。



そうですね。でもそれくらいは最低限やらないとダメですし、With a Willのフレンチトーストの12時間はまだ短いのかもしれません。
それこそホテルオークラなど名店は24時間漬けていますし、With a Willのフレンチトーストが特別だとは感じていないんです。
——— 開発過程での「失敗」が、今の味をさらに強くしたそうですね。



新商品の開発ではけっこう失敗していますよ(笑)
夏場に「揚げフレンチトースト」に挑戦しましたが、油を吸いすぎてベチャベチャになり大失敗、とか。
でも、その試行錯誤の中で「テイクアウト時のしぼみ」という課題に向き合い、水分量を減らして卵の配合比率を高めてみました。
結果として、卵の濃厚な味わいがより際立つプレミアムな今の形に進化したんです。
失敗してナンボですね。常に「もっと美味しく」を追求した結果だと思います。
——— 「With a Will」5周年記念の「禁断のサンド」も、やや高価格にもかかわらず大好評だそうですね。



良い意味でのこだわりを詰め込んだ結果、少し高い値段にはなってしまったのですが、常連さんが「待ってました」と喜んで注文してくださるんです。
うれしいですよね。値段の高低ではなく、「価値」としてこの「禁断のサンド」を選んでいただける店へと、この「With a Will」が成長できたのかなと感じています。
With a Willを知ってもらいたい!「認知の壁」を突き崩した方法




——— 冒頭に「お客さんが来ない」というお話がありました。味の理想を追うことと同時に、数字的なことを追わなければなりません。どのような突破口があったのでしょうか?



はい。あるセミナーで講師の方に言われたのは「気づかれていない」という現実がすべてで、だからお客さんが来ない。それならば「気づかせる」ためのことをしないとダメと言われました。そりゃそうですよね。
それでも、頭では分かっていながら、いざそれを実行に移せなかったり、プライドみたいなものがジャマしたり・・・。
——— 分かる気がします。上手く行かない時って、変にいろいろ考えすぎてしまって行動が止まってしまうことがあります。



まさにそうでした。
まず気づいてもらうことを優先しよう、お金がない中で少額で出来ることとして「のぼりを10本立てる」というアドバイスを実行しました。
職人気質だった私は最初「そんな不恰好な」と思いましたが、当時の私は「これでダメならもう終わりだ」という極限状態だったので、もうプライドとかそういうものは捨ててやってみました。
のぼりを5本立ててみたところ、ずっと前を通っていた方から「いつの間にできたの?」と驚くほど声をかけられたんです。
——— やっぱり「With a Will」の存在に気づいてもらえていなかった、というオチですね。



その通りです。知ってもらうためにはある程度お金をかけないといけないとわかりました。
LINE広告などの有料媒体にも思い切ってお金をかけてみたり、SNS投稿は「お客様に喜んでしてもらうもの」と割り切り、店側はしっかりと「認知」を広げる投資をする。
この考え方でやったら、1年半、毎月前年比を超え続けるという成果に繋がりました。
地域に根ざす!一対一の対話を大切にして築く「心のインフラ」へ




——— お客層も当初の想定とは少し変わってきたそうですね。



そうなんです。
最初は若い世代を想定していましたが、実際は50〜60代の方が中心です。
そこで、全セットドリンクにおかわりを付けるなど、「ゆっくり語らえる井戸端会議の場」としての設計を強めました。
——— 当然若い方もこの「With a Will」に来店されると思いますが、お客さまとの接点で気をつけていることはどんなことでしょう?



老若男女問わずに、コミュニケーションを取れるようにしたいですよね。
実は私、「ジャニーズからK-POPまで」浅く広い知識を持っていると自負しているんですが(笑)、これもあらゆる世代の方と会話の糸口を掴むための大切な武器になっています。
——— なるほど!インタビューさせていただいていて、やりやすさを感じるのも納得です(笑)
お客さまとのやり取りで良かった話やエピソードなどありますか?



ありがとうございます(笑)
以前、親戚の顔合わせ(結婚)にこの店を使っていただいたことがありましたが、そんな「人生の節目」に寄り添える場所になれたことが何より嬉しいです。
幼稚園のバザーへの協力や、常連さんとの趣味の話など、一人ひとりとの血の通った繋がりを優先したいと考えています。
——— 最後に、次の5年に向けた決意などお聞かせください。



5年前、どん底の逆境から始まった「With a Will」ですが、今は確かな「意志」があります。
これからも店名に込めた「Will」を胸に、新松戸のこの場所で、皆さんと共に「色褪せない瞬間」を一つひとつ積み重ねていきたい。
老若男女が集まり、笑顔が溢れる「心のインフラ」であり続けるために、情熱を絶やさず進んでいきます。
取材後記







今回の取材、想像以上にドラマがありましたね。コロナ禍でのオープン直後に「存亡の機」を迎え、そこから逆転の軌跡を辿ったという。安定を捨てた「強制終了」からの独立という逆境の中、店主の「覚悟」がそのまま店の強さに変わっていった印象です。



本当に、崖っぷちで生まれた「何が何でも軌道に乗せる」という強い意志が、まさに店名「With a Will」に込められているわけですね。この覚悟が、すべてを貫く核になっていると感じました。



その「Will」の深さは、店名の由来が声優の椎名へきるさんのアルバムタイトルであることにも表れていました。
個人的な「熱狂」を隠さずにブランドの核に据えることで、「わかる人にはわかる」という深いロイヤリティを生み出し、それが「お客様と一緒に色褪せない瞬間を共に過ごしたい」という洗練されたブランド哲学へと昇華されているのが見事ですね!



そして、作り方も徹底しています。看板メニューのフレンチトーストは小学校の調理実習が原点でありながら、ホテルオークラのレシピをベースに「究極の逸品」にまで高めている。
卵の濃厚な味わいを際立たせるための試行錯誤にも、職人としての探求心を感じました。
「また気軽に来てくださいよ!」と竹内さん。
ありふれた一言ですが、竹内さんがこれを言うと本当にまた行きたくなる。
そう思わせてくれる不思議が竹内さんにはあります。
きっとそれは、ここに至るまでの道のりの中で苦い思いや悔しさや歯痒さがあっても、何とかここまでやってこれた厳しい経験から醸成された「人間性」、そしてその人間性から発せられる何とも言えない笑顔がそう思わせるのかもしれません。
とにかく明るく楽しそうに話してくれたことは、インタビュアーとしても助かりましたし、楽しい時間でした。新しい限定メニューが出たら、また取材をさせてもらいたいと思います!
(取材・文:アクセルデザイン株式会社編集部)
